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大阪高等裁判所 昭和22年(ナ)4号 判決 1948年11月30日

原告

辰己三郞

被告

兵庫縣選擧管理委員會

被告補助參加人

細田作一

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負擔とする。

請求の趣旨

昭和二十二年六月三日附で被告がなしたところの同年四月三十日行われた兵庫縣會議員總選擧につき姫路市選擧區の選擧會において當選人と定めた原告の當選を無効とする旨の決定を取消す。

事實

原告及び被告補助參加人(以下參加人と略稱する。)は昭和二十二年四月三十日行われた兵庫縣會議員總選擧について姫路市選擧區から立候補したが、選擧會は原告の得票を七千七百六十一票、參加人の得票を七千七百五十六票とし、原告を最下位の當選人、參加人を次點者と決定した。これに對し都藤悦次外七名から、被告に異議を申し立てたところ、被告は開票管理者が無効投票と判定したもののうち、原告の有効投票が十四票、參加人の有効投票が四十六票あるものとし、これをそれぞれの既得の有効投票に加算し原告の得票を七千七百七十五票、參加人の得票を七千八百二票とし、參加人を當選人と定むべきであるとして、同年六月三日附で原告の當選を無効とする旨の決定をし、翌四日これを告示した。しかしながら右決定は次に述べるような違法がある。

第一、被告は右決定において開票管理者が、無効と判定した投票中乙第一號證の一乃至十一、乙第二號證の一乃至三十三、乙第三號證の一、二の四十六票を參加人の有効投票と認めたが、これは無効のものである。即ち

(一)乙第一號證の一は「六ソダ」と記載せられているもので「ホソダ」と讀むことはできない。同號證の二は「またさく一」と記載せられているもので、「また」は候補者の名の外他事を記載したものである。同號證の三は「ボツカワサクイチ」と讀む外なく「細田」と記載したものではない。もしこれを「ホリカワ」と讀むものとすれば、それは永年縣會議員であり、本件選擧の直前である昭和二十二年四月二十五日行われた衆議院議員選擧に立候補した「堀川恭平」の「堀川」を指すものであつて、「細田」を指すものということはできない。「ホリ川」を投票せよという宣傳が盛になされたので、選擧人中同人が縣會議員に立候補したものと誤解して同人に投票した者のあることも考えられるからである。

同號證の四は「ホツラ」と記載せられているもので「ホソラ」でないから、「細田」に對する投票ということはできない。

同號證の五の第二字は符號であつて「そ」を表示したものと認めることはできない。

同號證の六は「ホシダ」あるいは「ホンダ」と、同號證の七は「ホンダ」と讀む外はない。本件縣會議員選擧と姫路市會議員選擧とが法律上別個のものであることはいうをまたないが、兩者は同日同時、同一場所で行われ兩方の投票用紙は同じ投票箱の一つの差入口から投入せられたものであつて、縣會議員の投票用紙は黑色、市會議員の投票用紙は赤色で印刷せられているが、選擧人中兩投票を混同したものが多いことは、縣會議員選擧の無効投票中に明確に市會議員に立候補した者の氏名を記載したものが相當數あつたことによつて明らかである。従つて實際の取扱上兩者を切り離して考えることはできない。ところで姫路市會議員に立候補した者に「本田耕作」というものがあつて、右二票の投票は右「本田」に對する投票が混入したものと認められるから、これを「ホソダ」を表示したものと認めることは不當である。

同號證の八は「ボンダ」と讀む外なく「ホソダ」と記載せられたものと推認することはできない。

同號證の九は「ホダ田」と記載せられたものであつて、「ホソ田」とは文字の上でも音の上でも少しも似た點がない。「ホソ田」の誤記と認めることはできない。

同號證の十は「ボン田」と記載せられたものであつて、「ホソ田」と讀むことはできない。

同號證の十一は「畑田」と記載せられたものであつて、姫路市選擧區の選擧人中「畑田」という者が實在するから、「細田」の誤記と認めることはできない。

(二)乙第二號證の一乃至六、八乃至十七、十九乃至二十五、二十八、二十九、三十二の二十六票はいずれも漢字、ひらがな、かたかな、あるいはこれらの文字を混用して「細川」又は「細野」と記載せられたものである。

(1)原決定においては、姫路市長の調査によれば現在同市に「細川」及び「細野」という氏を有する者は居住せず、選擧人名簿にもこのような氏の者は登載せられていないといつているが、同市内に「細川」「細野」という氏を有する者は多數存し、選擧人名簿にも登載せられていることは明白である。

(2)投票の効力についてはなるべく選擧人の希望を尊重し、四圍の事情から選擧人が何人を投票しようかとしたか、その意思を推測して有効と判斷すべきものであるが、その推測にはおのずから限度があり、その投票が何人になされたかが明確であつて、その人以外の者になされた可能性が少しもない場合でなければならない。被告は選擧人は反對の意思が明らかでない限り、その選擧に立候補した者の何人かに投票したものと推定すべく、たとえ、投票の氏名の記載が正確を缺いていても、候補者中これに類似した氏名があれば、その者に對する投票と認めなければならないと主張する。しかしこれは次の三つの場合に分けて考えなければならない。即ち(い)投票に記載せられた氏名又は氏もしくは名を有する者が候補者中にも候補者以外にも存する場合、(ろ)投票に記載せられた氏名又は氏もしくは名が候補者のそれに類似し、候補者以外の者のそれにも類似する場合、(は)投票に記載せられた氏名又は氏もしくは名が候補者のそれに類似し候補者以外のそれに一致する場合とである。被告の主張する原則は右(い)(ろ)の場合に適用せられるものであつて、(は)の場合のように投票に記載せられた氏名又は氏もしくは名を有する者が候補者以外にあるときは、候補者の氏名又は氏もしくは名に類似していてもその候補者に對する投票とみるべきでないことは、從來多くの判例の存するところである。「細川」「細野」という氏を有する者が選擧人中に實在する以上「細川」「細野」という投票はこれに類似するに過ぎない「細田」に對する投票と認めることはできない。

(3)選擧權者の範圍が擴大せられたからといつて、有効投票を認めるのに寛大でなければならないということはできない。むしろ反對に、選擧權者の數が少かつたときに比べて當落を決する上において一票の有する價値は減じているから、嚴格な標準によつて投票の効力を判定した方がよい。普通選擧の目的とするところは國民總意の結集であり、それは何人に對する投票かを正確に判定できたものの集積でなければならないからである。

(4)被告は氏については最初の一字は正確な印象を持つが次の字は忘れやすいというけれども、「細田」の場合「細」は形容詞であり「田」は本體であるから、むしろ本體の「田」の方が印象に殘るものといえよう。最初の「細」の字にのみ重點を置いて、「細川」「細野」は「細田」の記憶違いだと斷ずることは不當である。

(5)今回の縣會議員選擧と市會議員選擧とは實際の取扱上これを切り離して考えることのできないことは前に述べたとおりであるが、市會議員候補者中には「中川」「稻川」「瀬川」「谷川」「藤川」など第二字に「川」の字を有する氏の者、「水野」「菅野」など第二字に「野」の字を有する氏の者があつたから、「細川」「細野」はこれらにも類似しており、「細田」にのみ類似しているものとはいえない。

(6)被告は「細川」「細野」と記載せられた投票は大部分參加人の有効投票の多い七開票區から出ているというけれども、それ以外の開票區から出た投票は參加人の有効投票と認めることはできない。そうすると七開票區から出た問題の投票も全部參加人の有効投票と推定することはできないこととなる。

(7)細野濱吉は十七年間にわたつて兵庫縣會議員であつて、昭和十六年十二月死亡したが、「細野」という投票には同人の死亡を知らないでこれを投票したものも考えられるから、直ちにこれを「細田作一」に對する投票と認めるのは不當である。

乙第二號證の七、十八、三十一、三十三の四票は「ホリカワ」「ホリ川」などと記載せられてあつて、前にも述べた衆議院議員候補者「堀川恭平」に對する投票であつて、參加人に對する投票と認めることはできない。

同號證の二十六、二十七の二票の第一字は「細」と讀むことはできない。假に「細」と讀むものとすれば「細野」「細川」であつて、これについては前に述べたとおりである。

同號證の三十の一票は「ホリノ」と讀むべきであつて、「堀野」は「細田」とは音讀の上でも文字の上でも全く異り參加人の有効投票と認めることはできない。

(三)乙第三號證の一の一票は「ホン」と記載せられたものであつて、假に「ホソ」と讀めるものとしても、「細川」「細野」「細原」などを指すこともあり、「細田」の「田」を誤つて落したものと推定することはできない。

同號證の二の一票は「ホダ」と記載せられたものであつて、前述の市會議員候補者「本田」又は縣會議員候補者「〓田武雄」に投票したものとも推定せられるから、直ちに「ホソダ」の「ソ」を誤つて落したものと認めることはできない。

從つて被告が以上の四十六票を參加人の有効投票と認定したのは失當であつて、いずれも無効のものといわなければならない。

第二、開票管理者が參加人の有効投票と判定し、被告も原決定においてこれに従つたもののうち次の百二十二票は無効である。

(一)甲第三號證の一乃至三の三票はその投票用紙に定められたところの兵庫縣の縣印が押してなく成規の用紙を用いないものであるから無効である。

(二)甲第四號證の一乃至二十二、二十四乃至二十六、二十八乃至三十の二十八票は次のとおり他事の記載があるから無効である。即ち

同號證の一は「民主政治會細田作一」と記載せられてあつて「民主政治會」は他事の記載である。

同號證の二、三はいずれも「細田」の次に判讀し難い文字の記載があり、何らかの意義のある他事の記載である。

同號證の四、五、七、八、十、十二、十五乃至十八、二十一、二十二は「細田作一」又は「細田」などと氏名又は氏の右下に句讀點を打つたものであり、同號證の六、十三は同じく氏名の左下に句讀點を打つたものであつて、いずれも他事の記載である。

同號證の九は「ホソダ」の右肩に「い」の字と、その下に判讀できない一字の記載とがあつて、他事の記載である。

同號證の十一は「細田ニ」と記載してあり「」は他事の記載である。

同號證の十四は「ホソタ」のタの右肩に點が打つてあり、同號證の十九は「細田作一」の一の左上に點が打つてあり、同號證の二十は「ホソダ」の下に不整形の形の記載があり、同號證の二十四乃至二十六は「細田作一」の右上、左下又は下に意味不明の記載があつて、いずれも他事の記載である。

同號證の二十八は「ケンカイホソダ」と記載してあり、「ケンカイ」は他事の記載である。

同號證の二十九は「細田」の次に判讀できない文字の記入があり、同號證の三十は「ほそだコ」と記載してあつて「コ」は他事の記載である。

(三)甲第四號證の二十七の一票は一種の符號又は圖解の記載であつて細田作一の文字を表示したものと認めることはできない。

(四)甲第五號證の一乃至七十八の七十八票は參加人以外の者に對する投票と認めなければならないから、無効である。即ち

同號證の一は「佃作一」、同號證の二は「佃田」と記載せられてある。「佃」は「つくだ」であつて「細」でない。姫路市選擧區の選擧人中「佃」という者が實在しているから、これは「佃」に對する投票であつて參加人に對する投票でない。

同號證の五、十七、二十七、三十五は「畑田作一」又は「畑田」と記載せられてある。「畑田」という者も前同樣選擧人中に實在しているから、參加人に對する投票と認めることはできない。

同號證の三は「細田新作」、同號證の四は「細田作太郞」、同號證の二十三は「細田健一」、同號證の五十五は「細田八十一」、同號證の六十六は「細田サクジ」、同號證の六十七は「細田作次」と記載せられてあつて、參加人に對する投票ではない。

同號證の六乃至八、七十、七十六乃至七十八は「ホソラ」と記載せられてあつて、「細良」に對する投票であつて參加人に對する投票とみることはできない。

同號證の二十一、二十二は「ホソザ」、同號證の二十四、五十九は「ホサダ」、同號證の二十九「ホサ田」と記載せられてあり「細座」又は「保佐田」に對する投票であつて、參加人に對する投票と認めることはできない。

同號證の二十、三十四、五十二は「ホツ田」、同號證の三十六、四十三、四十八、五十八、六十は「ホリグ」、同號證の四十一、四十九、六十四は「ホリタ」と記載せられてあり、「堀田」に對する投票であつて參加人に對する投票でない。

同號證の十八は二行に「ホリダ」「小田」と記載せられてあり、「堀田」又は「小田」のいずれに投票するか不明のものであつて、もとより參加人に對する投票ではない。

同號證の十、十三乃至十六、二十六、三十、三十一、三十八、三十九、四十二、四十四乃至四十七、五十一、五十四、五十六は「ホンダ」、同號證の二十八、五十は「ホン田」と記載せられてあつて、いずれも前に述べた市會議員候補者「本田耕作」に對する投票と認めなければならない。

同號證の三十七、五十三は「ホウダ」、同號證の四十は「ホウ田」、同號證の六十九は「ボウダタケヲ」、同號證の七十五は「ぼうださくいち」と記載せられてあつて、いずれも縣會議員候補者「〓田武雄」に對する投票である。

同號證の六十一は「細川」、同號證の七十二、七十三は「ホソ川」と記載せられてあつて、第一(二)に述べたとおり參加人に對する投票ではない。

同號證の九、十一、十二、十九、二十五、三十二、六十三、六十五、七十一は候補者の何人を記載したかを確認し難いものであるから無効である。

同號證の三十三は「細居作一」、同號證の五十七は「細川作一」と記載せられてあつて、「細居」「細川」と明記してあるから、參加人に對する投票ではない。

同號證の六十二、七十四は「ホソノ」と記載せられてあつて、「細野濱吉」に對する投票と認むべきことは第一(二)に述べたとおりである。

同號證の六十八の第一字は「糸」偏に「日」を作りとしたものであつて「細」でないから、次の二字は「作一」と讀むことができても、參加人に對する投票ではない。

(五)甲第六號證の一乃至十二の十二票は候補者の何人を記載したかを確認し難いものであるから無効である。

第三、開票管理者が無効投票と判定したもののうち、甲第二號證の一乃至四、七乃至九の七票は原告の有効投票である。

即ち

同號證の一、二は「たがみ」、同號證の三は「タカみ」と記載せられているが、縣會議員候補者中に「たがみ」「タカみ」という者なく、これに類似する氏を有する者は「たつみ」の外ないから、「たつみ」を投票するつもりで誤つて「たがみ」と記載したものと認められる。

同號證の四は「タニツ」と記載せられているが、「ニ」は「ミ」の誤記であり、しかも誤つて「ツ」と順序を逆に記載したもので、「タツミ」と書くつもりであつたものと認められる。

同號證の七は「辰ミ」と判讀することができる。

同號證の八は「タルみ」と判讀でき、候補者中「たるみ」と稱する者はないから、第二字の「ル」は「ツ」を誤記したものと認められる。

同號證の九は「サヴロ」と判讀でき「三郞」の名を有する者は候補者中原告以外に存在しない、以上の七票は原告を投票する意思で記載せられたものであることが明らかであるから、原告に對する投票と認めなければならない。

參加人の主張事實中乙第四號證の一乃至十四、丙第六號證の一乃至十五は、開票管理者が無効と判定した投票中にあること及び丙第二乃至第五號證の各號證は開票管理者が原告の有効投票と判定したもののうちにあることはこれを認めるが、その他はこれを否認する。

以上述べたとおり開票管理者が無効と判定し被告が原決定において參加人の有効投票と認めた乙第一乃至第三號證の各號證の四十六票は無効のものであり、開票管理者が參加人の有効投票と判定した甲第三乃至第六號證の各號證の百二十二票は無効のものであり、開票管理者が無効と判定した甲第二號證の一乃至四、七乃至九の七票は原告の有効投票である。從つて參加人の有効投票は當初開票管理者が參加人の有効投票と判定した七千七百五十六票から右百二十二票を減じた七千六百三十四票であるのに對して、原告の有効投票は當初開票管理者が原告の有効投票と判定した七千七百六十一票に被告が原決定において原告の有効投票と認めた十四票及び前記七票を加えると七千七百八十二票となる。そうすると原告の得票は參加人の得票より多數であるから、選擧會において原告を當選人と定めたのは正當であつて、原告の當選を無効とした原決定は違法であるから、その取消を求めるため本訴を提起したものである。

被告の答辯

被告は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負擔とする。との判決を求め、答辯として左のとおり述べた。

原告及び參加人が原告主張の選擧に立候補し、選擧會は原告の得票を七千七百六十一票、參加人の得票を七千七百五十六票とし原告を最下位の當選人、參加人を次點者と決定したこと、これに對し原告主張のような異議の申立があり、被告が原告主張のような決定をし、これを告示したことはこれを認める。しかし右決定は次に述べるとおり正當である。

第一、被告が右決定において開票管理者が無効と判定した乙第一號證の一乃至十一、乙第二號證の一乃至三十三、乙第三號證の一、二の四十六票を參加人の有効投票と認めたのは正當である。

(一)昭和二十一年道府縣制の改正により婦人參政權が認められ選擧權者の年齡資格が引き下げられ、有權者の數が倍加するに伴つて、一般に有權者の教育程度と選擧に對す關心とは低下を免れなかつた。從つて選擧人が投票に候補者の氏名を正確に記載することができないことはありがちである。この場合單に投票に表れた文字のみにとらわれることなく、たとえ、誤字、脱字、文字の轉倒などがあつて氏名の記載が正確を缺き又は誤記などがあつても、それが候補者となつている者の氏名又は氏もしくは名に近似しており、他にこれに類似する氏名又は氏もしくは名を有する候補者がないときは、その候補者に對する投票と認めなければならない。何故なれば、候補者制度をとる現行法の下では選擧人は候補者中の何人かを投票したものと推定しなければならないからである。

(二)乙第一號證の一乃至十一、乙第三號證の一、二の十三票は文字の形態運筆など極めて拙劣で字體の正確を缺くものあり又誤字脱字などがあるが(一)に述べた見地からよくみると候補者細田作一の有効投票と認めるのが相當である。

本件縣會議員選擧と同時に行われた姫路市會議員選擧に「本田耕作」が立候補したことはこれを認めるが、この二つの選擧は執行の便宜上同時に行われたに止まり全然別個の選擧である。姫路市選擧管理委員會においては縣會議員の投票用紙を黑色、市會議員の投票用紙を赤色で印刷し、兩者の投票がまぎれることのないようにしたのである。縣會議員の選擧人は縣會議員の候補者を投票したものと推定するという原則は、市會議員の選擧がたまたま同時に行われた場合にも變更されるものでない。もしそうでないとすると選擧執行の便宜上同時に行われたことによつて候補者に不利益を與え選擧人の意思を無視することとなるからである。從つて乙第一號證の六、七は市會議員候補者「本田耕作」に對する投票と認めることはできない。

(三)乙第二號證の一乃至三十三の三十三票は漢字、ひらがな、かたかなあるいはこれらの文字を混用して「細川」又は「細野」と記載せられたものである。

(1)被告が原決定をした後調査した結果、姫路市内に「細川」「細野」という氏を有する者が居住し選擧人名簿にも登載せられていることは判明した。しかし姫路市内に「細川」「細野」という氏を有する者が居住しないなどということは原決定の立證の補足的な説明資料に過ぎない。

(2)選擧人は反對の意志が明らかでない限りその選擧に立候補した者の中の何人かに投票したものと推定すべく、たとえ投票の氏名の記載が正確を缺いていても、候補者中これに類似した氏名があればその者に對する投票と認めなければならないことは(一)に述べたとおりである。ところが縣會議員候補者のうち他にその氏に「細」又は「川」の字を有する者なく「細川」「細野」に類似する氏を有する者は「細田」以外に存しない。候補者制度をとる現行法の下においては「細川」「細野」の記載か候補者「細田」に類似する以上、選擧人中に「細川」「細野」という氏を有する者が存することは考慮しなくてもよい。

(3)昭和二十二年四月には僅か二十五日間に七種の選擧が相次いで行われ、姫路市における各種選擧の候補者はあわせて三百八十一名に達し、しかも昭和二十二年法律第十六號選擧運動の文書圖畫等の特例に關する法律によつて文書による運動は極端に制限せられ、縣會議員の選擧においてはタブロイド型張札三百枚新聞廣告一面に制限せられた。このような關係から選擧人に對し候補者の氏名を周知徹底させることができず、選擧人中正確に候補者の氏名を記載できない者の少くなかつたことは免れ得ない結果であつた。從つて(2)に述べた原則は今回の選擧について特にその適用を強調する必要があるのである。

(4)一般に氏について、最初の一字は正確な印象を持つが次の字は忘れやすいものである。まして次の字が「田」であるときは同じ地形に關係のある「川」や「野」と混同することはありがちのことである。

(5)參加人は主として舊姫路市の區域特に姫路市第一乃至第四、第六、第七開票區及び白濱の七開票區を地盤としその地方に主力を注いで選擧運動を展開し右開票區についてのみ開票立會人の選任屆出をした。開票の結果においても右七開票區の參加人に對する有効投票は他の開票區の參加人に對するそれに比べて遙かに多いのであるが、「細川」「細野」と記載せられた投票合計三十九票(開票管理者が最初から參加人に對する有効投票と決定したものを含む、)中前記七開票區から出たものは三十五票あるのに、それ以外の開票區から出たものは四票に過ぎない。このように問題の「細川」「細野」の投票は大部分參加人に對する有効投票の多い開票區から出ている。もし問題の投票が參加人以外の者になされたものとすれば、各開票區に分散して出るはずである。

(6)細野濱吉が數回縣會議員として當選したことはこれを認めるが、同人は既に昭和十六年十二月死亡しており、その死後五年餘經過した本件選擧において同人を投票するものとは認められない。もし「細野」という投票が「細野濱吉」に對する投票とすれば、「細野濱吉」と氏名を記載した投票も出るはずであるが、各開票區における無効投票中このような投票は一票も發見することができない。又「細野」という投票が「細野濱吉」を指すものとすれば同人の地盤であつた姫路市飾磨第一乃至第五開票區及び廣畑開票區から相當出なければならないのに、この開票區からは僅か一票出たに止まり、その他は全部同人の地盤と關係のない開票區から出ている。

乙第一號證の三、乙第二號證の七、十八、三十一、三十三は明らかに「ホソカワ」「ホソ川」などと記載せられてあつて、「ホリカワ」「ホリ川」と讀むことはできない。堀川恭平が前に縣會議員であり、昭和二十二年四月二十五日行われた衆議院議員選擧に立候補したことはこれを認めるが、衆議院議員選擧は縣會議員選擧と同時に行われたものでなく、縣會議員に立候補していない堀川恭平に對する投票が混入しているものとは認められない。

第二、甲第三號證の一乃至三の三票は開票管理者が參加人の有効投票と判定し、被告も原決定においてこれに從つたものであるが、その投票用紙に縣印が押してないから、道府縣制第二十二條ノ九(現在は地方自治法第四十一條)(以下同法條と略稱する。)第一項第一號に規定する成規の用紙を用いないものとして無効であることはこれを認める。

第三、甲第四號證の一乃至二十二、二十四乃至三十、甲第五號證の一乃至七十八、甲第六號證の一乃至十二の百十九票は開票管理者が參加人の有効投票と判定し被告も原決定においてこれに從つたものであるが、これを有効と認めたのは正當である。

(一)甲第四號證の一乃至二十二、二十四乃至二十六、二十八乃至三十について、原告は他事を記載してあるから無効であると主張する。しかしながら同法條第一項第五號(地方自治法第四十一條第一項第二號)において他事記載を無効としたのは、これによつて投票の秘密を保持しようとするものである。同法條において氏名と一體をなすものと認められる職業、身分住所又は敬稱の類を記入してもいわゆる他事記載としないのは投票の秘密をもらす虞がないからである。「又は敬稱の類」と例示してあつて、事項を限定していないから、ここに掲げた事項と同じ種類と認められる事項を記入してもいわゆる他事記載とはならない、甲第四號證の一には「民主政治會」、同號證の二十八には「ケンカイ」と附記してあるが、これは候補者の何人であるかを一層明白にするため書きそえられたものであつて、いわゆる他事記載にはあたらない。

原告は同號證の各號證中句讀點を打つているものも、他事記載として無効であると主張する。しかしこのような投票は等級選擧又は制限選擧制度の下において有權者の少數であつた時代には投票の秘密性を破るものとして問題となるが、有權者の數が劃期的に增加した現行法の下ではそのようなことを懸念する必要はない。投票に句讀點の記載があるから無効であるとする見解は有權者の少かつた舊制度當時においてのみ適用せられるべきものであつて有權者の激增した今日なおこのような解釋をすることは著しく常識に反する。

同號證の各號證中その他のものは筆勢による墨點、故意でない墨痕汚點の附着、書き損じ又は誤字の訂正で意識的に記載せられたものでないから、いわゆる他事記載として無効とすべきものでない。

(二)甲第四號證の二十七の一票は字體やや珍奇であるが、容易に「細田作一」と判讀でき、單なる符號又は圖解とみることはできない。

(三)甲第五號證の一乃至七十八の七十八票について原告は參加人以外の者に對する投票と認められなければならないと主張する。右投票は文字の形態、運筆など拙劣で字體もまた正確を缺くものがあり、誤字、脱字、あるいはあて字などもあり、多少判讀に困難な點もあるが、第一、(一)に述べたとおりの理由によつて參加人に對する投票と認めなければならない。

同號證の十八は二行に「ホソダ」「小田」と記載せられてあつて、「小田」は細田の記載を誤つたためこれを訂正するため「ホソダ」とふりがなを附したものか又は「細田」を投票する意思を更に明確にするため同人の氏を二重に記載したものであつて、明らかに參加人に對する投票として有効である。一投票に同一人の氏名を併記した場合は、二人以上の候補者の氏名を記載したものでもなければ、いわゆる他事記載ともなるものでない。

同號證の十、十三乃至十六、二十六、二十八、三十、三十一、三十八、三十九、四十二、四十四乃至四十七、五十、五十一、五十四、五十六の二十票について、原告は市會議員候補者「本田耕作」に對する投票であると主張するが、第一、(二)で述べたとおり、參加人に對する投票と認めるのを相當とする。

同號證の六十一、六十二、七十二乃至七十四の五票は「細川」「ホソ川」「ホソノ」と記載せられているが、參加人に對する投票と認むべきことは第一(三)で述べたとおりである。

(四)甲第六號證の一乃至十二の十二票は筆蹟拙劣で誤字脱字あて字などもあるが、參加人に對する投票と認めることができる。

第四、甲第二號證の一乃至四、七乃至九の七票は開票管理者が無効と判定したものであるが、如何なる角度からみても「たつみ」「辰己」「三郞」と判讀することはできないから、同法條第一項第七號の候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効である。

參加人の主張する乙第四號證の一乃至十四、丙第六號證の一乃至十五は、開票管理者が無効と判定した投票中にあること及び丙第二乃至第五號證の各號證は開票管理者が原告の有効投票と判定したもののうちにあることはこれを認める。

參加人の主張

參加人は次の點を除いて被告と同一の主張をした。即ち

第一、乙第二號證の一、七、十一乃至十八、二十四、二十五、二十七、三十一乃至三十三の十六票は漢字又はかなで「細川」と記載せられているが、これは參加人に對する投票と認めるべきである。このことは、乙第一號證の三は「ホソカワサクイチ」丙第六號證の三は「細川作太郞」と記載せられていてその氏は「細川」と記載してあるが、その名とあわせ考えると參加人に對する投票と認めなければならないことによつても明らかである。

第二、甲第三號證の一乃至三の三票について原告はその投票用紙に兵庫縣の縣印が押してないから成規の用紙を用いないものとして無効であると主張する。しかし、同法條第一項第一號において正規の用紙を用いない投票を無効とする越旨は投票用紙の公給を保障し私製の用紙の使用を禁ずるにあつて、選擧人に投票の當日投票管理者から交付を受けた用紙を使用して投票させ、選擧の自由公正を確保しようとするのである。ここにいわゆる正規の用紙とは公給せられた投票用紙の意味であつて、いやしくも公の機關である投票管理者から交付せられた投票用紙である限り、たまたま、投票管理者側の過失により縣印のもれた投票用紙が數枚あつてもこれを成規の用紙を用いない無効の投票と解するのは正當でない。第三、[甲第四號證の四乃至八、十乃至二十二、二十四乃至二十六の原告が他事記載と主張する部分は汚損書き損じあるいは筆の餘勢によつて生じたものであり、意味のある記載ではない。「一」の筆の餘勢によつて「一、」とするのは、「郞」の筆の餘勢でその右下に點を打つのと同樣、多くの人が運筆上習慣的に無意識にこれをなすのである。

同號證の二、三、九、三十は書き損じであつて、意味のある記載ではない。

同號證の二十九は「細田樣」と敬稱を記載したものである。

(二)甲第五號證の一、二、五、十七、二十七、三十五は文字の拙劣である點からみても、「細」の字をはつきり知らない者が「細」と書くつもりで誤字を書いたものと認められる。殊に同號證一、五、三十五のように「作一」の名の記載したものは「參加人」に對する投票であることが明らかである。

同號證の六、七、八、七十、七十六乃至七十八は「ホソラ」、同號證の二十一、二十二は「ホソザ」同號證の二十四、二十九、五十九は「ホサダ」と記載せられているが、姫路地方の一部には「ダ」を「ラ」又は「ザ」と、「ソ」を「サ」となまつて發音する者があり、「ホソダ」と書くつもりでその發音どおり記載したものである。

同號證の三十六、四十一、四十三、四十八、四十九、五十八、六十、六十四は文字拙劣であるが、「ホソダ」と判讀できる。同號證の二十、三十四、五十二は「ホツ田」と記載せられてあるが、文字拙劣であつて「ツ」は「ソ」の誤記と認められる。殊に同號證の三十四は「ホツ田」の氏の下に「サク一」と名を記載してあることからみても參加人に對する投票であることは明らかである。

同號證の四十の第二字は「ウ」でなく「ソ」であり、同號證の五十三の第二字は「シ」ともみられるが「ソ」の誤記であり、同號證の七十五の第二字は「う」でなく「そ」の變體がなであり、いずれも「細田」に對する投票と認みなければならない。

(三)甲第六號證の五は縱に二つに破れているが、これは開票點檢後破れたものである。もし開票の際破れていたとすれば開票管理者、立會人がこれを有効とするはずはないから、反證のない限り開票の際は破れていなかつたものと認めなければならない。

第四、甲第二號證の一乃至三は「たがみ」と記載せられてあつて、市會議員候補者「田上義次」に對する投票である。

第五、被告は原決定において開票管理者が無効と判定した投票中乙第四號證の一乃至十四の十四票を原告の有効投票と認めたが、これは無効のものである。

同號證の三乃至六、八、十一、十二、十四は候補者でない者の氏名を記載したものである。殊に同號證の十二は市會議員候補者「田上義次」に對する投票である。

同號證の七、九、十、十三は候補者の何人を記載したか確認し難いものであり、なお同號證の十には他事の記載もある。

第六、開票管理者が原告の有効投票と判定し被告も原決定においてこれに從つたもののうち次の五十七票は無効である。

(一)丙第二號證の一乃至十一、十三、十六、二十、二十一、二十三、二十六、二十七、二十九、三十一、三十二、三十四、三十六、乃至四十二の二十九票は候補者の氏名以外の他事を記載したもので無効である。

(二)丙第三號證の一乃至十六の十六票は候補者でない者の氏名を記載したものであるから無効である。

(三)丙第四號證の一乃至八の八票は候補者の何人を記載したかを確認し難いものであるから無効である。

(四)丙第五號證の一乃至四の四票は他の候補者に對する投票であつて原告の得票に算入すべからざるものである。

第七、開票管理者が無効投票と判定したもののうち丙第六號證の一乃至十五の十五票は參加人に對する投票として有効である。

證據

原告は甲第一號證、第二號證の一乃至四、七乃至九、第三號證の一乃至三、第四號證の一乃至二十二、二十四乃至三十、第五號證の一乃至七十八、第六號證の一乃至十二、第七號證の一乃至四第八號證の一、二、第九號證、第十號證の一、二、第十一乃至第十七號證を提出し、乙號各證及び丙號各證の成立を認め檢證の結果を援用した。

被告は乙第一號證の一乃至十一、第二號證の一乃至三十三、第三號證の一、二、第四號證の一乃至十四、第五及び第六號證の各一乃至六、第七及び第八號證を提出し、甲第十三號證は誰が作成したものか知らないと述べ、その他の甲號各證の成立を認め、甲第十七號證を援用し、丙號各證の成立を認め、丙第五號證の一乃至四を援用し、檢證の結果を援用した。

參加人は丙第一號證、第二號證の一乃至十一、十三、十六、二十、二十一、二十三、二十六、二十七、二十九、三十一、三十二、三十四、三十六乃至四十二、第三號證の一乃至十六、第四號證の一乃至八、第五號證の一乃至四、第六號證の一乃至十五、第七號證の一乃至五を提出し、甲號各證について被告と同樣の認否援用をし、乙號各證を援用し、檢證の結果を援用した。

理由

原告及び參加人が昭和二十二年四月三十日行われた兵庫縣會議員總選擧について姫路市選擧區から立候補したが、選擧會は原告の得票を七千七百六十一票、參加人の得票を七千七百五十六票とし、原告を最下位の當選人、參加人を次點者と決定した。これに對し都藤悦次外七名から被告に異議を申し立てたところ、被告は開票管理者が無効投票と判定したもののうち、原告に對する有効投票が十四票、參加人に對する有効投票が四十六票あるものとし、これを既得の有効投票に加算し、原告の得票を七千七百七十五票參加人の得票を七千八百二票とし、參加人を當選人と定むべきであるとして、同年六月三日附で原告の當選を無効とする旨の決定をし、翌四日これを告示したことは當事者間に爭がない。

そこで問題となつている投票の効力を順次判斷するのであるが、それについて全般的に考えておかなければならないことがある。それは、最近の各種選擧法規の改正により有權者數が飛躍的に增加するに伴つて有權者中無筆に近い者も相當多數生じたこと及び昭和二十二年四月には僅か二十五日の間に相次いで七種類の選擧が行われ、昭和二十二年法律第十六號選擧運動の文書圖畫等の特例に關する法律によつて、文書による運動は極端に制限せられたため、有權者中候補者の氏名を正確に認識できなかつた者のあつたことは顯著な事實であるから、投票に候補者の氏名が正確に記載されてないからといつて直ちにこれを無効とすべきものではない。又候補者制度をとる現行法の下では選擧人は候補者中の何人かを投票したものと推定しなければならない。從つて投票に表れた氏名の記載が正確を缺き、文字の不鮮明、誤字、脱字、あて字、文字の轉倒などがあつても、それが候補者の氏名又は氏もしくは名によく似ており、他にこれに類似する氏名又は氏もしくは名を有する候補者がないときは、その候補者に對する投票と認定するのを相當と考える。

第一、被告が原決定において開票管理者が無効と判定した投票中乙第一號證の一乃至十一、乙第二號證の一乃至三十三、乙第三號證の一、二の四十六票を參加人の有効投票と認めたことは當事者間に爭のないところである。

(1)成立に爭のない乙第一號證の一の一票をみると、その第二字及び第三字が「ソダ」と記載せられていることは明らかであつて、その第一字は「六」と讀めないこともないが、成立に爭のない丙第一號證(兵庫縣會議員姫路市選擧區候補者名簿)によれば、候補者中「六ソダ」という氏を有する者なくこれに類似する氏を有する者は「ホソダ」以外に存しないことが認められ、又右投票の三字とも形態運筆拙劣で字體も整つていないから、第一字は「ホ」の誤字と認めるのを相當とする。從つてこの一票は「ホソダ」を表示するものとして、參加人の有効投票と認める。

(2)成立に爭のない乙第一號證の二の一票をみると、その第二字以下が「たさく一」と記載せられていることは明白であつて、その第一字は「ま」に似ているところもあるが、前記丙第一號證によれば、候補者中「またさく一」という氏名を有する者なくこれに類似する氏名を有する者は「ほそたさく一」以外に存しないことが認められ、又右投票の四字とも拙劣であるから、第一字は「ほ」の誤字であつて、その次に「そ」を書くのを誤つて落したものと認められる。これを強いて「また」と讀み、參加人を表示する「さく一」の外に餘分の記載があるから、他事記載として無効であるとする原告の主張は採用しない。從つてこの一票は「ほそたさく一」を表示するものとして、參加人の有効投票と認める。

(3)成立に爭のない乙第一號證の三の一票をみると、「ホソカワサクイチ」と判讀でき、「ホ」の右肩に一個の點のあるのは書き損じと認められ、原告主張のように「ボツカワサクイチ」、又は「ホリカワサクイチ」と讀むことはできない、候補者中「ホソカワサクイチ」という氏名を有する者なくこれに類似する氏名を有する者は參加人以外に存しないことは前記丙第一號證によつて明らかであるから、「ホソカワ」は「ホソダ」の誤記と認むべくこの一票は參加人の有効投票と認定する。

(4)成立に爭のない乙第一號證の四の一票をみると、その第一字は「ホ」であり、第二字は「ツ」に似ているところもあるが「ソ」と判讀でき、第三字は「ラ」と記載せられているが、一部の地方には「ダ」をなまつて「ラ」と發音する者のあることは顯著な事實であるから、この一票は「ホソダ」を表示するものとして、參加人の有効投票と認める。

(5)成立に爭のない乙第一號證の五の一票をみると、その第一字は「ほ」であり、第二字は變體がなの「そ」と容易に判讀でき、第三字は「ら」と記載せられているから、(4)と同樣、この一票は「ほそだ」を表示するものとして參加人の有効投票と認める。

(6)成立に爭のない乙第一號證の六の一票をみると、「ホシダ」と記載せられてあることは明らかであるが、前記丙第一號證によれば、候補者中「ホシダ」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は參加人以外に存しないことが認められるから、第二字の「シ」は「ソ」を誤記したものと認めるのを相當とする。從つてこの一票は、參加人の有効投票と認める。

(7)成立に爭のない乙第一號證の七の一票をみると、「ホンダ」と記載せられたものと認めなければならない。そして本件縣會議員選擧と同時に行われた姫路市會議員選擧に「本田耕作」が立候補したことは當事者間に爭なく又檢證の結果(記録第七七丁以下)によれば本件縣會議員選擧の無効投票中に市會議員に立候補した者を記載したものと認められる投票が相當あつたことは認めることができる。しかしこの二つの選擧は同時に行われても法律上別個のものであつて、縣會議員選擧の選擧人は市會議員の候補者でなくて縣會議員の候補者を投票したものと推定すべきものであり、「ホンダ」という記載が縣會議員候補者「ホソダ」の氏にとてもよく似ているから、市會議員候補者に「ホンダ」という氏を有するものがあつても、この一票は「ホソダ」を表示するものとして參加人の有効投票と認める。

(8)成立に爭のない乙第一號證の八の一票をみると、その第一字は「ホ」第三字は「ダ」であることは明らかであつて、第二字は「ン」でなく「ソ」と記載したものと認められるから、この一票は「ホソダ」を表示するものとして、參加人の有効投票と認める。

(9)成立に爭のない乙第一號證の九の一票をみると、「ホダ田」と記載せられてあることは明らかであるが、前記丙第一號證によると候補者中「ホダ田」に類似する氏を有する者は參加人以外に存しないことが認められるから、第二字の「ダ」は「ソ」の誤記と認むべく、この一票は參加人の有効投票と認める。

(10)成立に爭のない乙第一號證の十の一票をみると、「ポン田」と記載せられたものと認めなければならないが、前記丙第一號證によると候補者中「ポン田」に類似する氏を有する者は參加人以外に存しないことが明らかであるから、第一字の「ポ」は「ホ」、第二字の「ン」は「ソ」の誤記と認むべく、この一票は「ホソ田」を表示するものとして、參加人の有効投票と認める。

(11)成立に爭のない乙第一號證の十一の一票をみると、「畑田」と記載せられてあり、成立に爭のない甲第七號證の一によると姫路市選擧區の選擧人中「畑田」という氏を有する者がいることは明らかである、しかし、候補者制度をとる現行法の下では選擧人は反對の意思が明らかでない限り候補者の何人かを投票したものと推定すべきであつて、たまたま投票に記載せられた氏と同一の氏を有する者が候補者以外の選擧人中に實在していても、それが候補者の氏に類似する以上、その候補者に對する投票とみなければならない。前記丙第一號證によると候補者中「畑田」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は參加人以外にないことが認められるから、右「畑」の字は「細」の誤記と認める。從つてこの一票は、參加人の有効投票と認める。

(二)成立に爭のない乙第二號證の一乃至三十三の三十三票をみると、同號證の一、七、十一乃至十八、二十四、二十五、三十一、乃至三十三の十五票は漢字、ひらがな、かたかなあるいはこれらの文字を混用して「細川」と記載したものと判讀でき、原告主張のように同號證の七、十八、三十一、三十三を「ホリカワ」又は「ホリ川」と讀むことはできない。

同號證の二十七の一票の第一字は「細」と判讀できるから、これは「細川」と記載したものと認める。

同號證の二乃至六、八乃至十、十九乃至二十三、二十八乃至三十の十六票は漢字、ひらかな、かたかな、あるいはこれらの文字を混用して「細野」と記載したものと判讀でき、原告主張のように同號證の三十を「ホリノ」と讀むことはできない。

同號證の二十六の一票の第一字は「細」と判讀できるから、これは「細野」と記載したものと認める。

姫路市選擧區における選擧人中「細川」「細野」という氏を有する者の存することは當事者間に爭のないところであるが、前にも述べたとおり、候補者制度をとる以上選擧人は反對の意見が明らかでない限り候補者中の何人かを投票したものと推定すべきであつて、たまたま投票に記載せられた氏と同一の氏を有する者が候補者以外の選擧人中に實在していてもそれが候補者の氏に類似する以上その候補者に對する投票と認めるのを相當とする。前記丙第一號證によると縣會議員候補者中その氏に、「川」の字を有する者は一人もなく、「野」の字を有する者は「矢野善寛」一人に過ぎない。もとより被告の主張するように、氏について最初の一字は正確な印象を持つが次の字は忘れやすいというような一般的な立論をすることはできないけれども、「細田」の氏を前記丙第一號證に掲げられた各候補者の氏と比べてみると、一般に選擧人に對して「細」の字の形と音とが與える印象は「田」の字のそれよりも強かつたものと推測される。このことは後に認定する甲第五號證の三十三のように「細田」を「細居」と誤記した「細居作一」という投票の存することからも、うかがい知ることができる。從つて候補者中文字及び發音において「細川」「細野」に類似する氏を有する者は參加人以外に存しないものといわなければならない。

成立に爭のない甲第十號證の一によれば市會議員候補者中「中川」「稻田」「瀨川」「谷川」「藤川」など第二字に川の字を有する氏の者、「水野」「菅野」など第二字に「野」の字を有する氏の者があつたことを認めることができ、又縣會議員選擧の無効投票中に市會議員候補者を記載したものと認められる投票が相當あつたことは前に認定したとおりであるが、この二つの選擧は同時に行われても法律上別箇のものであつて、市會議員候補者中に「細川」「細野」に類似する氏を有する者があるかどうかはそんなに重きをおくことができないばかりでなく、「細川」「細野」の氏は右に掲げた市會議員候補者よりも「細田」に類似するものといわなければならない。

細野濱吉が永年縣會議員であつたことは當事者間に爭がないが、同人が昭和十六年十二月死亡したこともまた當事者間に爭がないから、「細野」という氏だけを記載した投票を以て既に五年餘前死亡している細野濱吉に對する投票と認めることはできない。

「細川」「細野」と記載せられた乙第二號證の一乃至三十三の三十三票の大半は參加人の有効投票が比較的多かつた開票區にあつたもので、その他の開票區に僅少であつたことは檢證の結果(記録第五七丁以下)に徴して明らかであるが、もし右投票が、參加人以外の者になされたものとすれば、各開票區に分散して出るはずであるということも一應考えられる。

前に認定したように乙第一號證の三は「ホソカワサクイチ」即ち「細川作一」と記載せられており、これらは全體からみて「細田作一」に對する投票と認めなければならないが、「細田」と記載しないで「細川」と記載している。

以上の諸點を合せ考えると、「細川」「細野」と記載せられた乙第二號證の一乃至三十三の三十三票は縣會議員候補者中文字及び發音において最もよく似た氏を有する參加人に對する有効投票と認めるのを相當とする。

(三)(1)成立に爭のない乙第三號證の一の一票をみると、その第一字は「ホ」と記載せられてあることは明らかであつて、第二字は「ソ」と判讀でき「ン」と讀むことはできない。前記丙第一號證によれば候補者中「ホソ」に類似する氏を有するものは「細田」以外に存しないから、この一票は參加人の有効投票と認める。

(2)成立に爭のない乙第三號證の二の一票をみると、「ホダ」と記載せられてあることは明らかであるが、前記丙第一號證によると縣會議員候補者中「〓田」即ち「ボウダ」という氏を有する者があるから、必ずしも「細田」即ち「ホソダ」の「ソ」の字を誤つて落したものと斷することはできない。從つて右投票は同法條第一項第七號によつて候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効である。

第二、甲第三號證の一乃至三の三票は開票管理者が參加人の有効投票と判定し被告も原決定においてこれに從つたものであるが、その投票用紙は同法條第一項第一號にいわゆる成規の用紙を用いないものであることは當事者間に爭のないところであるから、右投票は無効のものと認める。

參加人は右投票用紙は投票管理者から交付せられたものであるから、縣印が押してなくても成規の用紙であつて、右投票は無効でないと主張するけれども、「參加人の訴訟行爲が被參加人の訴訟行爲と抵觸するときはその効力を生じないものである」から、右主張は採用できない。

第三、甲第四號證の一乃至二十二、二十四乃至三十、甲第五號證の一乃至七十八、甲第六號證の一乃至十二の百十九票は開票管理者が參加人の有効投票と判定し、被告も原決定においてこれに從つたものであることは當事者間に爭のないところである。

(一)(1)成立に爭のない甲第四號證の一、九、二十八をみると、同號證の一の一票は「細田作一」の右側に「民主政治會」と記載せられ、同號證の九の一票は「ホソダ」の右側に「ケンカ」と記載したものと判讀でき、同號證二十八の一票は「ホソダ」の右側に「ケンカイ」と記載したことが認められる。元來同法條第一項第五號(地方自治法は第四十一條第一項第二號)において候補者の氏名の外他事を記載した投票を無効とする旨規定した趣旨は、投票の秘密を守るがためである。同法條において職業、身分、住所又は敬稱の類を記載してもいわゆる他事記載としないのは、これらは氏名と一體をなすものであつて投票の秘密をもらす虞がないからである。しかも「又は敬稱の類」と事項を例示してあつて限定していないから、ここに掲げた事項と同じ種類と認められる事項を記入しても、いわゆる他事記載にはあたらない。ところで、前記丙號一號證によると參加人は兵庫縣民主政治會に屬したことが明らかであるから同號證の一の「民主政治會」と記載したのは參加人の所屬政黨を表したものであつて、所屬政黨は一候補者を他と區別する事項として職業、身分、住所又は敬稱と同樣の種類のものと解するのを相當とするから、これはいわゆる他事記載ではない。同號證の九の「ケンカ」とあるのは「ケンカイ」の誤記と認むべく、同號證の二十八の「ケンカイ」とともに縣會議員候補者であることを表したものであつて、これも前同樣、候補者の職業、身分、住所又は敬稱と同樣の種類のものであり、いわゆる他事記載でないと解するのを相當とする。從つて以上の三票は無効のものでない。

(2)成立に爭のない甲第四號證の二、三、二十九をみると、同號證の二の一票の「細田」の次は文字拙劣であるが「さん」と記載したものと判讀でき、同號證の三の一票の「細田」の次はやや不明確であるが「さん」と記載したものと判讀でき、同號證の二十九の一票の「細田」の次の字は「樣」と判讀できるから、いずれも敬稱であつて、他事記載でないから無効のものでない。

(3)成立に爭のない甲第四號證の四、五、七、八、十、十五乃至十八、二十一、二十二の十一票をみると、いずれも「細田作一、」又は「細田、」と記載せられてあることが認められる。前にも述べたとおり、他事を記載した投票を無効とする法意は投票の秘密を保持するにあることを考えれば、投票に點が記載せられている場合これをいたずらに憶測して意識的になされた他事記載と解しその投票を無効とすることは許されない。(昭和二十三年(オ)第三三號同年七月十三日最高裁判所判決參照)例えば「郞」の字を記載するに際してその右下に餘分の點を打つても、それが「郞」の字の一部をなすものと認められるいわゆる慣例の打點があるのと同樣、一つの氏名又は氏を記載する際その氏名又は氏の右下に句讀點を打つ習癖を有する者が時々あつて、この場合氏名又は氏と一體をなすものとして習慣的に殆ど無意識のうちに點を打つていることは顯著な事實である。右十一票の投票をよくみると、いずれもその點の位置、形状、筆勢などからみて、その氏名又は氏と一體をなすものとして語尾に打たれた點であつて、意識的になされた他事記載でないものと認めるのを相當とする。從つて右十一票は無効のものでない。

(4)成立に爭のない甲第四號證の六、十九の二票をみると、同號證の六は「細田作一」の「一」の左部の上と下とに一個ずつの墨點があり、同號證の十九は「細田作一」の「一」の上に一つの墨點があるが、いずれもその點の位置、形状と「一」との關係からみて、他の字を書きかけて中止しその上に「一」の字を記載したものと認められる。從つてこの二票には他事の記載なく無効のものでない。

(5)成立に爭のない甲第四號證の十一乃至十三の三票をみると、同號證の十一の「細田」の次の墨痕はその位置、形状、筆勢などからみて「二」の字と認めることはできず不用意に附着した汚點と認めるのを相當とし、同號證の十二の「細田作一」の「一」の右方の墨痕、同號證の十三同じく「一」の左下方の墨痕はいずれもその位置、形状、筆勢などからみて不用意についた汚點と認めるのを相當とし、いずれも他事記載として無効とすべきものでない。

(6)成立に爭のない甲第四號證の二十、二十四乃至二十六の四票をみると、同號證の二十の「ホソダ」の下の鉛筆の痕、同號證の二十四の「細田作一」の「細」の右方の墨痕、同號證の二十五の「細田作一」の「作」の左方の墨痕、同號證の二十六の「細田作一」の下の墨痕はいずれも書き損じを消したものであることが明白であるから、この四票は他事記載として無効とすべきものでない。

(7)成立に爭のない甲第四號證の十四の一票をみると、「ホソタ」の「タ」の右肩に點が一個打つてあることが認められるが、これは「タ」に濁點を打つべきものを誤つて一個しか打たなかつたものと認められるから、他事記載として無効とすべきものでない。

(8)成立に爭のない甲第四號證の三十の一票をみると、「ほぞた」と判讀でき、「た」の下に「コ」ともみられるような記載があるが、更によくみると全體の文字が拙劣で「そ」にまで誤つて濁點を打つていることや「コ」の字のように橫の二劃を左方から右方にひいたものでなく、右方から左方に、はねていることから考えると、「左」の右肩に濁點を打つべきものをその位置を誤つて「左」の下方に打つたものと認められるから、他事記載でなく參加人の有効投票と認定する。

(二)成立に爭のない甲第四號證の二十七の一票をみると、その字の形は珍奇であるが、明白に「細田作一」と記載せられており、一種の符號又は圖解の記載と解することはできないから、これを無効の投票ということはできない。

(三)(1)成立に爭のない甲第五號證の一の一票をみると、「佃作一」と記載せられていて、前記甲第七號證の一及び成立に爭のない甲第七號證の三によると姫路市選擧區の選擧人中「佃」という氏を有する者がいることは明らかであるが、前記丙第一號證によると候補者中「佃」という氏を有する者なく、「佃作一」に類似する氏名を有する者は參加人以外にないから、前に述べたのと同樣の理由により「佃」は「細」の誤記でその次に「田」の字を誤つて落したものと認めるのを相當とする。從つてこの一票は參加人の有効投票と認める。

(2)成立に爭のない甲第五號證の二の一票をみると、「佃田」と記載せられているか、前記丙第一號證によると、これに類似する氏を有する者は「細田」以外に存しないから、「佃」は「細」の誤記と認むべく、この一票は參加人の有効投票と認める。

(3)成立に爭のない、甲第五號證の五、十七、三十五の三票をみると、同號證の五はその最初の二字は「畑田」第四條は「一」と記載せられ第三字はその偏が不明確であるが作りは「作」の作りが記載せられ、同號證の十七の第一字は「畑」の偏と作りとが反對に書かれ、第二字は「田」が記載せられ、同號證の三十五は「畑田作一」と記載せられている。選擧人中「畑田」という氏を有する者がいること及び候補者中「畑田」という氏に類似する氏を有する者は、參加人以外にないことは第一(一)において認定したとおりであつて、そこで説明したのと同樣の理由によつて、同號證の五の第一字の「畑」に「細一の誤記、第三字は「作」の誤字、同號證の十七の第一字は「細」の誤字、同號證の三十五の第一字の「畑」は「細」の誤記と認める。從つてこの三票は參加人の有効投票と認める。

(4)成立に爭のない甲第五號證の二十七の一票をみると、その第一字は「細」と記載せられたものであつて「畑」ではなく、第二字は「田」であるから、もとより參加人の有効投票である。

(5)成立に爭のない甲第五號證三、四、二十三、五十五、六十六、六十七の六票をみると、同號證の三は「細田新作」、同號證の四は「細田作太郞」、同號證の二十三は「細田健一」、同號證の五十五は「細田八十一」、同號證の六十六は「細田サクジ」、同號證の六十七は「細田作次」と記載せられていて、前記丙第一號證によると、これらに類似する氏名を有する者は參加人以外に存しないから、いずれも「作一」と記載すべきものを誤記したものであつて、參加人の有効投票と認める。

(6)成立に爭のない甲第五號證の六乃至八、七十、七十六乃至七十八の七票をみると、同號證の六、八、七十、七十六乃至七十八は「ホソラ」、同號證の七は「ほそら」と記載せられていることは明らかで、前にも述べたとおり「ダ」をなまつて「ラ」と發音する者があるから、この七票は「ホソダ」を表示するものと認めなければならない。なお、同號證の七十は「ホソラ」という氏を二行に重複して記載してあるが、これは左側の行の第三字を消してその左側に「ラ」を書いたため更にその記載を明確にするため右側の行を書いたものと認められるから、無効のものではない。從つてこの七票は參加人の有効投票である。

(7)成立に爭のない甲第五號證の二十一、二十二の二票をみると、いずれも「ホソザ」と記載せられているが、一部の地方に「ダ」をなまつて「ザ」と發音する者があることは顯著な事實であるから、この二票は、參加人の有効投票と認める。

(8)成立に爭のない甲第五號證の二十四、二十九、五十九の三票をみると、同號證の二十四、五十九は「ホサダ」、同號證の二十九は「ホサ田」と記載せられてあるが、前記丙第一號證によると「ホサダ」「ホサ田」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は參加人以外にいないから、この三票は、參加人の有効投票と認める。

(9)成立に爭のない甲第五號證の二十、三十四、五十二の三票をみると、同號證の二十、五十二は「ホツ田」、同號證の三十四は「ホツ田サク一」と記載せられているが、前記丙第一號證によると候補者中「ホツ田」という氏を有する者なく、「ホツ田」又は「ホツ田サク一」に類似する氏又は氏名を有する者は參加人以外に存しないから、この三票は、參加人の有効投票と認める。

(10)成立に爭のない甲第五號證の三十六、四十一、四十三、四十八、四十九、五十八、六十、六十四の八票をみると、同號證の三十六、四十三、四十八、五十八、六十は「ホソダ」、同號證の四十一、四十九、六十四は「ホソタ」と判讀でき、原告主張のように「ホリダ」、「ホリタ」と讀むことはできないから、參加人の有効投票であることは明らかである。

(11)成立に爭のない、甲第五號證の十八の一票をみると、その左側の行に「小田」、右側の行に「ホソダ」と記載せられてあつて、原告主張のように右側の行の第二字を「リ」と讀むことはできない。前記丙第一號證によると候補者中「小田」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は、參加人以外に存しないから、右の一票は「細田」を投票する意思で最初「小田」と書いたが、やはり「細田」を表示するかどうかに不安があつたため、「細田」を投票する意思を明確にするため、更にその右側に「ホソダ」と記載したものと認められる。從つてこの投票は二人以上の候補者の氏名を記載したものとして無効とすべきでなく、參加人の有効投票と認めなければならない。

(12)成立に爭のない甲第五號證の十、十三乃至十六、二十八、三十、三十一、三十八、三十九、四十二、四十四、四十七、五十、五十一、五十六の十六票をみると、同號證の十、十四乃至十六、三十八、四十二、四十四、五十一、五十六は「ホソダ」、同號證の十三、三十、四十七は「ホソダ」、同號證の三十一は「ボソタ」、同號證の三十九は「ホソダサク」、同號證の二十八、五十は「ホソ田」と記載せられたものと認められ、原告主張のように「ホンダ」、「ホン田」と記載せられたものとは認めることができない。從つて右十六票は參加人の有効投票と認定する。

(13)成立に爭のない甲第五號證の二十六、四十五、四十六、五十四の四票をみると、同號證の四十五は「ホシダ」、同號證の二十六、四十六、五十四は「ホンダ」と記載したものと認められるが、第一(一)(6)(7)に述べたのと同一の理由によつて、いずれも參加人の有効投票と認める。

(14)成立に爭のない甲第五號證の三十七、六十九の二票をみると、同號證の三十七は「ボウダ」、同號證の六十九は「ボオダタケヲ」と記載せられてあつて、前記丙第一號證によれば縣會議員候補者中「〓田武雄」という者があるから、これは同人に對する投票であつて、參加人の有効投票と認めることはできない。

(15)成立に爭のない甲第五號證の四十、五十三、七十五の三票をみると、同號證の四十はその第一字は「ホ」第三字は「田」と記載せられていることが明らかであつて、第二字は「ウ」に似たところもないではないが、橫に一劃を書いた後その誤りに氣がついてその上に「ソ」の字を記載したものと認めるのを相當とする。同號證の五十三は「ホシダ」と記載せられており、同號證の七十五は「ほうださくいち」と記載せられている。從つて右三票は原告主張のように「〓田武雄」に對する投票と認める餘地なく、同號證の五十三は第一(一)(6)に、述べたのと同一の理由により、又同號證の七十五の第二字は「そ」の誤記と認められるから、いずれも參加人の有効投票と認めなければならない。

(16)成立に爭のない、甲第五號證の六十一、七十二、七十三の三票をみると、同號證の六十一は「細川」、同號證の七十二、七十三は「ホソ川」と記載せられているが、この三票は第一(二)で説明したとおり、參加人の有効投票と認める。

(17)成立に爭のない甲第五號證の九、十一、十二、十九、二十五、三十二、六十三、六十五、七十一の九票をみると、同號證の九は文字拙劣であるが「ホソク」と記載したものと認められ、前記丙第一號證によると、これに類似した氏を有する者は參加人以外にないから第三字の「ク」は「タ」の誤記と認める。同號證の十一は第一字第二字は「ホソ」と記載したものと認められ、第三字は不明瞭であるが「ダ」と判讀できないことはない。同號證の十二は「ほそた」と記載したものと認められ、その下の墨痕は字を書きかけて消したものと認められる。同號證の十九は「ホタ」と記載し「ホ」の右方に「細」と記載したもので、「ホソタ」と記載するつもりで誤つて「ソ」を落し「ホタ」と書いたが、更に明確にするため「細」の字を書きそえたものと認められる。同號證の二十五は「ヲソダ」、同號證の三十二は「ホラダ」、同號證の六十三は「オソダ」、同號證の六十五は「ポソタ」、同號證の七十一は「ほどだ」と記載したものと認められるが、前記丙第一號證によるとこれらに類似する氏を有する者は參加人以外にいないから、同號證の二十五の第一字の「ラ」は「ホ」の、同號證の三十二の第二字の「ラ」は「ソ」の、同號證の六十三の第一字の「オ」は「ホ」の、同號證の六十五の第一字の「ポ」は「ホ」の、同號證の七十一の第二字の「ど」は「そ」の誤記と認むべく、この投票は參加人の有効投票と認める。

(18)成立に爭のない甲第五號證の三十三、五十七の二票をみると、同號證の三十三は「細居作一」、同號證の五十七は「細川作一」と記載せられてあるが、前記丙第一號證によると、これらに類似する氏名を有する者は參加人以外に存しないことが明らかであるから、いずれも第二字は「田」の誤記と認むべく、參加人の有効投票と認める。

(19)成立に爭のない甲第五號證の六十二、七十四の二票をみると、いずれも「ホソノ」と記載せられているが、この二票は第一(二)で説明したとおり、參加人の有効投票と認める。

(20)成立に爭のない甲第五號證の六十八の一票をみると、その第一字は「糸」偏に「日」を作りとしたものであるが、「細」の誤字と認むべく、次の二字は「作一」と記載せられていて、前記丙第一號證によると候補者中「細作一」に類似する氏名を有する者は參加人以外にないから、この一票は第一字の次に「田」の字を誤つて落したものと認むべく、參加人の有効投票である。

(四)(1)成立に爭のない甲第六號證の一乃至三、六乃至十二の十票をみると、同號證の一はその最初の二字は「ほそ」と記載せられており、その第三字は「だ」の最後の一劃が足りないが「だ」の誤字と認められ、「ほそだ」の右方の墨痕は書き損じた字を消したものと認められる。同號證の二の第一字は字劃が足りないが「細」の誤字と認められ、第二字が「田」であることは明らかである。同號證の三は「ホソ田」と記載し更に明確にするためその右側に「細田」と記載したものと認められる。同號證の六はその第一字は墨汁が乾かない間に折りたたんだため汚染があつて明確を缺くが「細一と判讀せられ、第二字以下は「田作一」と記載せられていることが明らかである。同號證の七はその第一字は「ほ」の左側の縱劃が缺けているが「ほ」の誤字と認むべく、第二字は變體がなの「そ」、第三字は「だ」を記載したことが明らかである。同號證の八は「ほソダ」と判讀できる。同號證の九はその第一字が「ホ」、第三字が「ダ」であることは明らかであつて、その第二字は字の形が整つていないが「ソ」と判讀できる。同號證の十はその第一字が「ホ」、第三字が「ダ」であることは明らかであつて、第二字は變體がなの「そ」と判讀できる。同號證の十一はその第一字は上に餘分の橫劃があるが「細」の誤字と認められ、第二字が「田」であることは明らかである。同號證の十二は「細田」と判讀できる。從つて右十票は參加人の有効投票と認める。

(2)成立に爭のない甲第六號證の四の一票をみると、被選擧人記載欄に先端のとがつた物でつけた形跡のある「細田作一」という痕があるけれども、全然着色されていないから、この一票は同法條第一項第六號に規定する候補者の氏名を自書しないものにあたり、無効のものといわなければならない。

(3)成立に爭のない甲第六號證の五の一票をみると、「細田作一」と記載した上これを消し、更にその右側に「細田作一」と記載してあるが、投票用紙の中央から縱に二つに破れていることが認められる(姫路市第六開票區における原告の有効投票中にも投票用紙の中央から橫に二つに破れている一票の存することは檢證の結果(記録第七四丁)によつて明らかである)。しかし右は開票後整理の際誤つて破られたものであるとの被告主張事實について、原告は明らかに爭わず又辯論の全趣旨によつてもこれを爭おうとする意思を認められないから、これを自白したものとみなす。投票が開票後整理の際誤つて破られたことによつて無効となるものでないことはいうをまたないから、この一票は參加人の有効投票と認める。

第四、甲第二號證の一乃至四、七乃至九の七票は開票管理者が無効投票と判定したものであることは當事者間に爭のないところである。

(1)成立に爭のない甲第二號證の一乃至三の三票をみると、同號證の一、二はいずれもその第一字は「た」、第三字は「み」と記載せられており、第二字は「が」に似ており、同號證の三はその第一字は「タ」、第三字は「み」と記載せられており、第二字は「カ」に似ておることが認められるそして前記甲第十號證の一によると市會議員候補者に「田上義次」という者があつたことが明らかであるが、第一(一)(7)で説明したとおり、縣會議員選擧においては市會議員候補者でなく縣會議員候補者を投票したものと推定すべきであり、右記載は原告の氏である「たつみ」によく似ているから、右三票の第二字は「つ」の誤記と認むべく、原告の有効投票と認めるのを相當とする。

(2)成立に爭のない甲第二號證の四の一票をみると、「タニツ」と記載せられているが、前記丙第一號證によると候補者中「タニツ」という氏を有する者なくこれに類似する氏を有する者は原告以外に存しないことが認められるから、第二字の「ニ」は「ミ」の誤記であつて、しかも誤つて第三字の「ツ」と順序を逆に記載したものと認めるのを相當とする。從つてこの一票は原告の有効投票と認める。

(3)成立に爭のない甲第二號證の七、八の二票をみると、同號證の七はその第一字は「タ」と記載せられていることが明らかで、第二字第三字は字の形が整つていないが「ツミ」と判讀できる。同號證の八はその第一字は「タ」、第二字は「ル」と記載せられていることが明らかで、第三字は不明確であるが「ミ」を橫向に記載したものと認められる。前記丙第一號證によると候補者中「タルミ」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は原告以外に存しないことが認められるから、第二字の「ル」は「ツ」の誤記と認められる。從つてこの二票は原告の有効投票と認める。

(4)成立に爭のない甲第二號證の九の一票をみると、いずれも不鮮明ではあるが、第一字は「サ」第二字は「ブ」第三字は「ロ」と判讀でき、前記丙第一號證によると候補者中「サブロ」という名を有する者なく、これに類似する名を有する者は原告以外に存しないことが認められるから、この一票は原告の有効投票と認める。

第五、被告が原決定において開票管理者が無効と判定した投票中乙第四號證の一乃至十四の十四票を原告の有効投票と認めたことは當事者間に爭のないところである。

(1)成立に爭のない乙第四號證の一の一票をみると、「巽」と記載せられてあつて「辰巳」と同じ音であるから、原告の有効投票と認める。

(2)成立に爭のない乙第四號證の二の一票をみると、「たつみ八郞」と記載せられてあるが、「八」は「三」の誤記と認め、原告の有効投票とする。

(3)成立に爭のない乙第四號證の三の一票をみると「タミ」と記載せられておるが、前記丙第一號證によると候補者中「タミ」という氏又は名を有する者なく、これに類似する氏を有する者は原告以外にないから、誤つて第一字と第二字との間に「ツ」を記載するのを落したものと認めるのを相當とする。從つてこの一票は原告の有効投票と認める。

(4)成立に爭のない乙第四號證の四の一票をみると、「たつた」と記載せられているが、前記丙第一號證によると候補者中「たつた」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は被告以外に存しないから、第三字の「た」は「み」の誤記と認める。從つてこの一票は原告の有効投票である。

(5)成立に爭のない乙第四號證の五の一票をみると、「辰」と記載せられているが、前記丙第一號證によると候補者中「辰」という氏又は名を有する者なく、これに類似する氏を有する者は原告以外に存しないから、誤つて次に「巳」を記載するのを落したものと認めるのを相當とする。從つてこの一票は原告の有効投票と認める。

(6)成立に爭のない乙第四號證の六の一票をみると、「タルミ」と記載せられているから、第四(3)において甲第二號證の八について述べたのと同じ理由によつて原告の有効投票と認める。

(7)成立に爭のない乙第四號證の七の一票をみると、その第一字は餘分の字劃があるが「辰」の誤字と認められ、第二字は「巳」であるから、原告の有効投票と認める。

(8)成立に爭のない乙第四號證の八の一票をみると、その最初の四字は「タツミサ」と記載せられており、第五字はやや不明確であるが「ブ」と判讀できるが、第六字はどのような字が記載せられているか判讀できない。しかし全體からみて原告の有効投票であることは明らかである。

(9)成立に爭のない乙第四號證の九の一票をみると、文字拙劣で字形整わず餘分の字劃のあるところもあるが、どうにか「タツミ」と判讀できるから、原告の有効投票と認める。

(10)成立に爭のない乙第四號證の十の一票をみると、一行に「タツノ」と記載してあるが「ノ」の左方に「ミ」の記載がある。

前記丙第一號證によると候補者中「タツノ」という氏を有する者はいないから、「タツミ」と記載する意思で誤つて、「タツノ」と記載したが、疑しかつたので「ノ」の橫に「ミ」を記載したものと認めるのを相當とする。このように疑しい文字を二重に記載しているのは、いわゆる他事記載にあたらないから、この一票は原告の有効投票と認める。

(11)成立に爭のない乙第四號證の十一の一票をみると、「タツツ」と記載せられてあるが、前記丙第一號證によると候補者中「タツツ」という氏を有する者なく、これに類似する氏を有する者は原告以外に存しないから、第三字の「ツ」は「ミ」の誤記と認むべく、この一票は原告の有効投票である。

(12)成立に爭のない乙第四號證の十二の一票をみると、その第一字は「た」、第三字は「ミ」と記載せられており、第二字は一見「が」にも似ているが、よくみると他の字を書きかけた上に「つ」を書いたものと認められるから、この一票は原告の有効投票である。

(13)成立に爭のない乙第四號證の十三の一票をみると、その第一字は最後の字劃が足りないが「タ」の誤字と認められ、次の二字は「ツミ」と記載せられているから、原告の有効投票と認める。

(14)成立に爭のない乙第四號證の十四の一票をみると、「巳ミ三郞」と記載せられていて、「巳ミ」は「辰巳」の誤記と認めるのを相當とするから、原告の有効投票と認める。

第六、丙第二號證の一乃至十一、十三、十六、二十、二十一、二十三、二十六、二十七、二十九、三十一、三十二、三十四、三十六乃至四十二、丙第三號證の一乃至十六、丙第四號證の一乃至八丙第五號證の一乃至四の五十七票は開票管理者が原告の有効投票と判定し、被告も原決定においてこれに從つたものであることは當事者間に爭のないところである。

(一)(1)成立に爭のない丙第二號證の一、二、七、十三、二十、二十一、二十三、二十六、二十七、三十四、三十八、四十、四十一の十三票をみると、いずれも文字以外に一個あるいは數個の墨痕があるが、その位置、形状、筆勢などからみて不用意に附着した汚點と認めるのを相當とし、いわゆる他事記載として無効としてすべきものでない。

(2)成立に爭のない丙第二號證の三乃至五、四十二の四票をみると、いずれも文字以外に一個あるいは數個の墨痕又は鉛筆の痕があるが、その位置、形状、筆勢などからみて、字を書きかけてその書き損じを消したものと認められるから、他事記載として無効とすべきものでない。

(3)成立に爭のない丙第二號證の六、九、二十九、三十一、三十九の五票をみると、同號證の六は「立」の字の右側に「たつみ」と記載せられているが、最初「立」と書いたが疑しかつたのでその下に字を續けることなく別の行に「たつみ」と記載したものと認められる。同號證の九は一字を書いて消し、その右側に「辰見三郞」と記載し、これに「タツミ」とふりがなを附したものと認められる。同號證の二十九は「タツミ」と記載したがその上部に不用意に汚點がついたので、更に明確にするためその左側に重ねて「タツミ」と記載したものと認められる。同號證の三十一は「タツ」と記載したが疑しかつたので明確にするためその右側に「タツミ」と記載したものと認められる。同號證の三十九は「辰巳三郞」と記載した後これに「タツミ」とふりかなを附したもので、「郞」の右下の一個の點は「郞」の字の一部をなすものとして打たれたいわゆる慣例の打點であることが認められる。以上のような記載はいわゆる他事記載にあたらないものと解する。

(4)成立に爭のない丙第二號證の十、十一の二票をみると、同號證の十は「辰」の字を消しその右側に「タツミ、サブロウ」と記載せられ、同號證の十一は「タツミ、三郞」と記載せられている。このように氏と名の間に丸を打つようなことは通常行われる例のないことであるから、右の二票は同法條第一項地方自治法は第四十一條第一項第二號第五號に規定する他事を記載したものとして無効のものと認める外はない。

(5)成立に爭のない丙第二號證の三十六、三十七の二票をみると、同號證の三十六は「辰巳三郞」の「郞」の左上方に點が打たれておることが認められ、同號證の三十七は「辰巳三郞」の「辰」の右下方に點が打たれておることが認められるが、いずれもその位置、形状、筆勢からみて前者は「郞」、後者は「辰」の一部として記載せられたものと認めるのを相當とする。從つて意識的になされた他事記載でなく、右二票は無効のものでない。

(6)成立に爭のない丙第二號證の十六の一票をみると、「タツミ三郞」の右側に「イダノ」と記載せられているが、成立に爭のない甲第十六號證によると原告の住所は姫路市飯田にあつて「飯田」は「イダ」と發音することを認められるから、「イダノ」は「飯田の」であつて原告の住所を記載したものと認められる。從つてこの一票は他事を記載したものでなく、無効でない。

(7)成立に爭のない丙第二號證の三十二の一票をみると、「辰巳三郞」の右側に「縣會議員」と記載せられているが、第三(一)(1)において説明したとおり、他事記載でなく、無効のものでない。

(8)成立に爭のない丙第二號證の八の一票をみると、「辰巳三郞」の右側に「熱血漢」と記載せられているが、「熱血漢」ということは同法條第一項第五號(地方自治法は第四十一條第一項第二號)但し書に規定する職業、身分、住所又は敬稱の類にあたる事項でないことは明らかであるから、同法條によつて右法條は無効のものといわなければならない。

(二)(1)成立に爭のない丙第三號證の一、四の二票をみると、同號證の一はその第一字は「タ」と記載せられ次に「ツ」の字を書きかけて書き損じに氣づきそのままとしてその左方に「ツミ」と記載したものと認められる。同號證の四はその第一字第二字は「タツ」と記載せられていることが明らかで第三字は「ミ」と判讀せられ、左方の墨痕は字を書いた上を消したものであることが認められる。從つてこの二票は原告の有効投票である。

(2)成立に爭のない丙第三號證の二、三、五、十二、十三の五票をみると、同號證の二はその第一字第二字は「タツ」と記載せられ第三字は「ツ」に似ているところもある。同號證の三はその第一字は「タ」第三字は「ミ」と記載せられ第二字は「ア」に似ているところもある。同號證の五はその第二字第三字は「ツミ」と記載せられ、第一字は「ワ」にも「ロ」にも似ている。同號證の十二はその第一字第二字は「タツ」と記載せられ第三字は「メ」に似たところもある。同號證の十三は「タツメ」と記載せられている。しかし前記丙第一號證中これらに類似する氏を有する者は原告以外に存しないから、同號證の二の第三字は「ミ」の誤字、同號證の三の第二字は「ツ」の誤字、同號證の五の第一字は「タ」の誤字同號證の十二、十三の第三字は「ミ」の誤字誤記と認めるのを相當とする。從つてこの五票は原告の有効投票である。

(3)成立に爭のない丙第三號證の六、七、九乃至十一、十四乃至十六の八票をみると、同號證の六は「タツ」、同號證の七は「タツウミ」、同號證の九、十四、十六はいずれも「巳三郞」、同號證の十、十一、十五はいずれも「辰三郞」と記載せられているが、前記丙第一號證によるとこれらに類似した氏名を有する者は原告以外に存しないから、同號證の六は誤つて第三字に「ミ」を落したもの、同號證の七は第三字の「ウ」が誤つて餘分に記載せられたもの、同號證の九、十四、十六は誤つて第一字に「辰」を落したもの、同號證の十、十一、十五は誤つて第二字に「巳」を落したものと認めるのを相當とする。從つてこの八票は原告の有効投票である。

(4)成立に爭のない丙第三號證の八の一票をみると、「多田三郞」と記載せられている。「多田」は「タダ」と「オオタ」とも發音せられるが、前記丙第一號證によると縣會議員候補者に「大多重藏」という者があり「オオタジュウゾウ」と發音せられ、檢證の結果(記録第六六丁)によると「大多重藏」の有効投票中「多田十三」と記載したものがあることが認められる。從つてこの一票は同法條第一項第七號の候補者の何人を記載したかを確認し難いものにあたるとして無効である。

(三)(1)成立に爭のない丙第四號證の一票をみると、その第二字は「ソ」と判讀できるが、第一字はよくみても如何なる字か判讀できないから、この一票は同法條第一項第七號の候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効のものと認める。

(2)成立に爭のない丙第四號證の二乃至八の七票をみると、同號證の二は「タツミ」と判讀できる。同號證の三は第一字第二字は「タつ」と記載せられ第三字は判讀できないが、前記丙第一號證によるとこれに類似する氏を有する者は原告以外に存しないから、第三字は「ミ」の誤字と認められる。同號證の四、五はいずれも第二字は「巳」と記載せられ、第一字は字劃が少し足りないが「辰」によく似ているからその誤字と認められる。同號證の六は墨汁が乾かない前に投票用紙を折りたたんだため、墨痕が散つているが、その下に墨色濃く「辰巳三郞」と記載してあるのが認められる。同號證の七はその第二字第三字は「つみ」と記載されていることが明らかで、第一字は前同樣墨汁が乾かない前に投票用紙を折りたたんだため墨痕がついて不鮮明となつているが「た」と記載したものと認められる。同號證の八は「辰巳」と記載せられていることが明らかである。從つて右の七票は原告の有効投票である。

(四)成立に爭のない丙第五號證の一乃至四の四票をみると、同號證の一、二はいずれも「井上惣次郞」、同號證の三は「大多重藏」同號證の四は「伊〓菊次」と記載せられていることが明らかであるから、これを原告の有効投票に算入することはできない。

第七、丙第六號證の一乃至十五の十五票は開票管理者が無効投票と判定したものであることは當事者間に爭のないところである。

(1)成立に爭のない丙第六號證の一の一票をみると、「ヲバタサク一」と記載せられていて、「サク一」は原告の名であるが、丙第一號證によると縣會議員候補者中「小原」という者があつて「ヲバラ」と發音せられるから、この一票は參加人を記載したものかどうか確認できない。

(2)成立に爭のない丙第六號證の二、四、五、七、九、の五票をみると、同號證の二は「トトダ」、同號證の四は「ホアゾ」と記載したものと認める外なく、同號證の五は第一字は「ホ」と記載せられているが第二字第三字は判讀できない。同號證の七は「ほソゆウ」、同號證の九は「イソダ」と讀む外はない。從つてこの五票は候補者の何人を記載したかを確認し難い無効のものである。

(3)成立に爭のない丙第六號證の六、八、十の三票をみると、同號證の六は一ほそだたつを」と記載せられており、同號證の八はその第一字は「ホ」と記載せられ第二字は「田」の上の橫の一劃のない「田」の誤字とも認められるものが記載せられている。同號證の十は「保田」と記載せられている。しかし前に認定したとおり縣會議員候補者に「〓田武雄」(ボウダタケヲ)という者があるから、この三票は候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効と認める。

(4)成立に爭のない丙第六號證の三、十一乃至十四の五票をみると、同號證の三は「細川作太郞」と記載せられておる。同號證の十一はその第二字は「田」と記載せられ、第一字は「糸」偏に「田」を作りとし、その「田」の下に三個の點を橫に續けて書いてあるが「細」の誤字と讀める。同號證の十二はその第一字は「ほ」、第二字は變體がなの「そ」、第三字は「田」と記載せられたものと認める。同號證の十三は「ほそだ」と記載せられてある。同號證の十四はその第一字は「ホ」第三字は「ダ」と記載せられ第二字は字形が整つていないが「ソ」と判讀できないことはない。從つてこの五票は參加人の有効投票と認める。

(5)成立に爭のない丙第六號證の十五の一票をみると、「ホノマ」と記載せられていて、前記丙第一號證によると縣會議員候補者中「本間」(ホンマ)という者があることが認められるから、この一票は參加人の有効投票と認めることはできない。

以上の結果をまとめると、開票管理者が無効と判定した投票中參加人の有効投票と認むべきものは、乙第一號證の一乃至十一の十一票、乙第二號證の一乃至三十三の三十三票、乙第三號證の一の一票、丙第六號證の三、十一乃至十四の五票合計五十票であり、開票管理者が參加人の有効投票と判定した投票中無効と認むべきものは甲第三號證の一乃至三の三票、甲第五號證の三十七、六十九の二票、甲第六號證の四の一票合計六票であるから、當初開票管理者が參加人の有効投票と判定した七千七百五十六票から右六票を減じ、前記五十票を加えると參加人の有効投票は七千八百票となる。一方開票管理者が無効と判定した投票中原告の有効投票と認むべきものは、甲第二號證の一乃至四、七乃至九の七票、乙第四號證の一乃至十四の十四票合計二十一票であり、開票管理者が原告の有効投票と判定した投票中無効と認むべきものは、丙第二號證の八、十、十一の三票、丙第三號證の八の一票、丙第四號證の一の一票、丙第五號證の一乃至四の四票合計九票であるから、當初開票管理者が原告の有効投票と判定した七千七百六十一票から右九票を減じ前記二十一票を加えると原告の有効投票は七千七百七十三票となる。

そうすると參加人の得票は原告の投票より多數であるから選擧會においては參加人を當選人と定めるべきものであつて原告を當選人と定めたのは違法である。被告がその理由において右説示と多少異る點はあるが、原告の當選を無効とする旨の決定をしたのは結局正當であつて、右決定取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負擔につき民事訴訟法第八十九條を適用し主文のとおり判決する。

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